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マンゴスチンブログ
by mangost
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ベルリン国際映画祭66 その2
今回のベルリナーレ短編部門で上映された作品について記しておきます。

「Vita Lakamaya」と同プログラムだったRonny Trocker監督の”ESTATE”(Summer)という作品。トレーラーを見た時から映像が持つ違和感に引きつけられたが、これがどうやってつくられたのか本人から聞くまで検討もつかなかった。イメージは良く知られたある写真から巧妙に作り出されている。2010年、カナリア諸島にて数百人の死者をだした難民船の転覆事故に関する一枚である。リゾート地として観光客で賑わうそのビーチへ命がけで泳ぎ着いた一人のアフリカ人に誰一人として注意を向ける者はいなかった、かのような写真である。ロイターの記者が撮影したその写真はアフリカ難民に対するヨーロッパの無関心振りを象徴しているとして話題になったらしいが、今回長編で金熊を獲ったG・ロージ監督の「火の海」も、地中海のランペドゥーザ島を舞台に、そこに暮らす少年とアフリカ難民のドキュメンタリーを並列させて見せることでこの問題を世界へ向けてアプローチしている。これらロイターの写真や「火の海」が難民問題をストレートに表す手法だとすれば、”ESTATE”はいったい何を見せようとしているのか?
登場人物は全て精巧に作られた”ニセモノ”であり、ぴくりとも動く事は無い。一見すると3D
CGのように見えるが、カメラのたどたどしい動きだけがそれが実在する空間だということを伝えている。やがて実体となり動き出すアフリカ人は安堵する間もなく、警備隊の声を無視し、島の奥へ向かおうとするが、、、。
この異様な映画をどう解釈すれば良いのか、アフリカに対するヨーロッパの潜在的な視点が映像そのものと重なっていると言うのは簡単かもしれないが、未消化部分が多すぎてそれ以上を語ることができない。

短編映画の特徴の一つに、時代に対する速攻性があるとすれば、まさに映画祭の舞台では多くのジャブが世界へ向けて放たれたようにも見える。しかしその中の幾つかの作品には別の意味が見えない形であったように思えてならない。
それは派手ではないが、ボディブローのように時間を経て効果を表すものなのかもしれない。

”ESTATE” トレーラーhttps://vimeo.com/153385688
ベルリン国際映画祭66 その2_a0048259_17345795.jpg

by mangost | 2016-03-07 21:32 | Film Festival
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